若木ブドウのゲノム予測、他の手法を上回る精度と研究で判明

24形質の大半でゲノムモデルが最高精度を示し、相関係数は最高0.827に。マルチオミクスの組み合わせによる上乗せ効果は限定的だった

2026年11月4日(水)

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若いブドウ樹の生育能力を予測する3つの手法を比較した新たな研究で、DNAに基づくゲノム予測は、検証した形質の大半でメタボローム解析や分光分析を上回る精度を示した。これにより、育種家が育種プロセスのより早い段階で新たなブドウ樹を選抜する道筋が明確になった。

npj Science of Plantsに掲載されたこの研究では、ブドウ樹が本格的な生産段階に入る前に生物学的データから農業形質を予測することで、ブドウの改良を加速できるかを検証した。世代交代に長い年月を要する作物では、病害抵抗性や気候適応性を高める育種に何年もかかるため、これは重要な課題だ。また、ワインやその他のブドウ由来飲料にも実務的な意味を持つ。品質を維持しながら、高温、干ばつ、病害圧により強い新品種を目指す育種プログラムにとって、どこに資金を投じるかの判断に関わるためだ。

研究者らは、二親交配によるブドウ育種集団を対象に3年間、24の農業形質を表現型評価し、3つの手法を比較した。形質には、生育、結実性、果実の化学組成、収量に関する指標が含まれた。比較したのは、7,386個のSNPマーカーに基づくゲノム予測、近赤外分光法(NIRS)によるフェノーム予測、非標的液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)によるメタボローム予測だ。さらに、7種類の統計モデルと、ブドウ園および温室で異なる生育段階に採取した木質部・葉の試料を含む複数のサンプリング手法も検証した。

最も明確な結果は、ゲノム予測が最も高い性能を示したことだ。予測能力は、開花からベレゾン(着色開始期)までの積算温度で最高となり、相関係数r=0.827に達した。24形質全体でのゲノム予測能力の平均は、LASSOで0.375、rrBLUPで0.473の範囲となり、このグループではrrBLUPが平均で最も優れたモデルだった。

2番目に高い性能を示したのはメタボローム予測だった。形質別の最高値は、芽吹き期にブドウ園で採取した葉を使ったメタボロームBLUPモデルによる未熟果の重量で、r=0.586だった。メタボローム予測能力の平均は、Random Forestの0.350からMBLUPの0.424までの範囲だった。3手法のうち最も低かったのはフェノーム予測で、単一形質での最高値は一次芽の結実性におけるr=0.391、平均予測能力は使用したモデルに応じて0.096~0.215だった。

実務面では、コストと精度のトレードオフが明らかになった。NIRSを用いるフェノーム予測は、データ収集の費用が安く、処理も速い一方、予測シグナルはしばしば弱かった。ゲノム予測はより安定した精度を示した。メタボローム予測は特定の形質で高い性能を示す場合があったものの、分析コストが高く、実験室での作業も複雑になる。

こうした手法間の差が生じた理由は、各種データの特性からも説明できる。研究者らは、それぞれの特徴量のばらつきのうち、残差ノイズではなく遺伝的要因によるものがどの程度かを推定した。NIR波長データの遺伝子型分散は低く、平均2%、最大17%で、遺伝率も平均0.07、最大0.46と低かった。一方、メタボローム特徴量の遺伝率はより高く、平均0.25で、0.90を超える値も複数あった。これは、今回用いたモデルでは、スペクトルデータよりもメタボロームデータのほうが遺伝子型に関連する安定した生物学的情報を多く捉えていたことを示唆している。

サンプリング条件も結果を左右した。フェノーム予測では、ブドウ園で開花期に採取した葉のサンプル別平均予測能力が0.172で最も高く、芽吹き期に採取したブドウ園の葉が0.161で続いた。最も低かったのは開花期に温室で採取した葉で、0.088だった。メタボローム予測では、すべてのサンプリング区分を特徴量ごとのBLUPにまとめた場合に平均0.421と最高の結果が得られた。芽吹き期にブドウ園で採取した葉が0.382で続き、開花期に温室で採取した葉はここでも平均0.199と最も低かった。

温室で採取した葉がブドウ園の試料の代わりになるかも検証した。形質によっては代替できたものの、結果に一貫性はなかった。フェノーム予測では、果実の糖度や房重などで温室のスペクトルデータがブドウ園のデータを上回った一方、芽吹き時期や果実の化学組成に関する一部の指標ではブドウ園のデータが優れていた。メタボローム予測では全般にブドウ園の葉のほうが高い性能を示したが、温室のデータも一部の形質では有用なシグナルを含んでいた。

メタボローム解析用に選んだ同じ150本のブドウ樹について、3つのオミクス層を比較したところ、大半の形質ではゲノム予測が最も高い性能を示し、メタボローム予測が中間、フェノーム予測が最も低かった。ただし、限られた形質ではメタボローム予測がゲノム予測と同等かそれを上回った。該当したのは、ある生育段階における果実のpH、全体的な結実性、結実の質、株当たりの新梢数、株当たりの剪定枝生重量、クロロフィル関連指標のSPAD502などだった。

データ層を組み合わせることで予測結果が向上するかも調べた。生物学の多くの分野では、形質の背景にある複雑さをより多く捉える手段として、マルチオミクス手法が推奨されている。しかし今回、向上幅は限られていた。ゲノム、フェノーム、メタボロームの情報を組み合わせたモデルは、ゲノム予測単独に対して一貫した優位性を示さなかった。ゲノム情報のみのモデルとゲノム情報を含む組み合わせは、統計上の最上位グループを形成したものの、フェノームやメタボロームのデータを加えても性能が一律に向上することはなかった。論文は、今回のサンプル数では、マルチオミクス統合が予測能力を一貫して高める証拠は得られなかったとしている。

今回の結果は、信頼性の高い早期選抜を必要とするブドウ育種プログラムにおいて、ゲノム選抜を主軸とすることを支持している。著者らは、メタボロームやフェノームの手法にも役割はあるものの、主に、再現性のある予測シグナルを示す形質やサンプリング設計での活用になると述べた。うどんこ病などの病害に強く、殺菌剤の使用回数を抑え、より高温で変動の大きい栽培条件下でも生産性を維持できる新品種の開発を目指すなかで、こうした知見は公的育種機関や民間育苗業者の資源配分に影響する可能性がある。

この問題は苗木生産の現場にとどまらない。ブドウ樹はワイン、ジュース、生食用ブドウ、乾燥ブドウの各市場を支えており、今行われる育種の判断が、何年も先に栽培農家や飲料メーカーが利用できる品種を左右する。ゲノム予測が引き続き最も高い効果をもたらすなら、育種プログラムは高密度のDNAマーカーデータへの投資を優先し、メタボロームや分光分析による選抜は、特に病害抵抗性、果実組成、気候ストレスへの適応を狙う場合に、より選択的に活用するようになる可能性がある。

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