カリフォルニアのワイン生産者、パソ・ロブレスで平年比211%の降雨が予想されるエルニーニョの冬に備える
嵐で地下水が補充される一方、土壌浸食や道路寸断の恐れも。洪水が春まで続けば若木に被害が及ぶ可能性がある
2026年11月5日(木)

カリフォルニアのワイン生産者は、エルニーニョの影響で非常に雨の多い冬となる可能性に、安堵と懸念の入り交じった思いで備えている。予報では、2026年12月から2027年3月にかけて、州の広い範囲で大雨が見込まれている。
限られた水資源に依存する業界にとって、雨の多い冬には明確な利点があることが多い。ブドウ樹は冬に休眠するため、雨は貯水池や帯水層を補充し、土壌中の塩類を移動させ、生育期が始まる前に深い根の養分吸収を助ける。こうした影響はブドウ畑の外にも広く及ぶ。カリフォルニアは米国内でも輸出市場でも主要なワイン生産地域であり、水の利用可能性や土壌の状態、ブドウ畑の修復費用の変化は、飲料業界全体のブドウ供給やコストを左右する可能性がある。
しかし生産者や浸食対策の専門家によると、水源を潤す同じ嵐が土壌を流し、道路を損壊し、進入路を冠水させることもある。湿潤な状態が長く続けば、ブドウ樹に被害を及ぼす場合もある。ギャビン・ニューサム知事は10月、気象パターンに伴う洪水や停電の可能性に備え、州非常事態を宣言した。
サンルイスオビスポ郡で長年ブドウを栽培してきたグレッグ・ヒビッツ氏は、ブドウ栽培では通常、雨は歓迎されると話す。同氏の会社Grapevine Capital Partnersは、パソ・ロブレスを中心に3,000エーカーを超えるブドウ畑を管理している。一方で、強いエルニーニョは生産者に「根本的なジレンマ」をもたらすとも指摘する。望んでいる雨も、嵐が激しすぎれば破壊的なものになり得るからだ。
報告書で引用された予測モデルによると、パソ・ロブレスでは2026年12月から2027年3月にかけて、平年の211%に当たる雨量が見込まれている。サンタバーバラでは平年比226%、サンタローザ周辺では173%と予測される。ヒビッツ氏によると、気温が高く乾燥した地域は、大規模な冬の嵐を吸収することに土壌が慣れていないため、とりわけ被害を受けやすい可能性がある。
多くの生産者が最も懸念しているのは土壌浸食だ。勢いの強い水流は表土を削り、ブドウの植栽列の土台を崩し、支柱や灌漑設備を損傷する恐れがある。ヒビッツ氏によると、深刻な場合は洪水で敷地が大きく流失し、ブドウ畑として使えなくなる可能性もある。
米国農務省自然資源保全局の浸食対策専門家、リッチ・カザーレ氏は、1度の嵐で甚大な被害が生じるのを目にしてきたという。同氏はヒールドスバーグ近郊で、整地は済んでいたものの、まだブドウを植えていなかった畑が大雨の後に崩壊した現場を訪れたことを振り返った。斜面が深く耕されていたため、丘の一部が崩れ、約2.5エーカーが失われたという。
カザーレ氏はここ数週間、ブドウ畑やほかの農場を訪れ、嵐への備えについて話し合ってきた。一般的な対策として、ジュート製のネット、プラスチックシート、わらを詰めたメッシュ管があり、いずれも水の流出を遅らせ、土壌をその場にとどめることを目的としている。しかし、こうした対策の多くは設置方法が誤っていたり、敷地内の適切でない場所に設置されていたりすると同氏は警告する。場合によっては排水を悪化させたり、問題を別の場所に移したりすることもあるという。
最も確実な防御策は被覆作物だと同氏は話す。マスタード、スイートピー、ラディッシュなど、ブドウの植栽列の間で育てる植物は、根で土壌を固定するほか、土壌の健全性を高める効果もある。耕したばかりの土地は土が緩く、流されやすいため、通常はより浸食を受けやすい。そのため、カザーレ氏によると、樹齢の若いブドウ畑は雨の多い年にリスクが高まる。
懸念がある一方、近年の経験からは、洪水が必ずしもブドウ畑に深刻な被害をもたらすわけではないことがうかがえる。2023年に大気の川がカリフォルニアを襲った際、道路に亀裂が入り、多くの都市部が冠水したが、ブドウ畑は大きな損失をほぼ免れた。冬の洪水にブドウ樹が浸かる写真は不安を招くように見えるが、休眠期の短期間の冠水が必ずしも有害とは限らないと生産者は話す。
冬の洪水が比較的よく起きる北カリフォルニアでは、ブドウ樹そのものよりも、ブドウ畑周辺への被害を懸念する生産者もいる。ナパ・バレーのYount Mills Vineyard社長、ケンダル・ホクシー=オニスコ氏は、道路や従業員の自宅に影響する洪水を最も心配していると話す。同氏は、2006年に家族が住むヨントビルの自宅が浸水したことを振り返った。
湿潤な状態が生育サイクルのかなり遅い時期まで続けば、リスクは変わってくる。Wine Instituteの環境問題担当副会長、アリソン・ジョーダン氏によると、2026年の収穫が早く終わったことで、多くの生産者は大嵐の到来前に畑を整える時間をより多く確保できる見込みだ。しかし、ブドウ樹が2026年春と同じほど早く萌芽し、洪水が2027年3月まで続けば、過剰な水分によって根への酸素供給が妨げられ、開花にも影響する可能性がある。
こうしたタイミングは生産量に関わる。地下水を回復させる冬になれば、翌シーズンの灌漑負担を軽減できる可能性があり、特にパソ・ロブレスのような乾燥地域ではその効果が大きい。一方、嵐で表土が流されたり、ブドウ畑へのアクセスが断たれたりすれば、供給過剰と低い利益率にすでに直面しているカリフォルニアのワイン業界で、生産者の人件費や修繕費が膨らむ恐れがある。
J. Lohrの共同オーナー、シンシア・ロア氏は、水が乏しい地域ではエルニーニョは諸刃の剣になり得ると話す。同社はパソ・ロブレスで2,600エーカーを超えるブドウ畑を経営している。地下水位を回復させるだけの雨は欲しいが、表層の土壌が流されるほどの雨は望んでいないという。
一部のブドウ畑の管理者は、水を防ぐのではなく、流れを導くことに注力している。パソ・ロブレスのBooker Vineyardのマネージャー、ヒラリー・グレイブス氏は、雨水が敷地外へ流れ出るのではなく、たまって地中に染み込むよう、土壌に溝を切る計画だと話す。浸食や排水を管理できる生産者にとっては、カリフォルニアが広範囲に及ぶ嵐の被害に備えるシーズンであっても、雨の多い冬が利点となる可能性はある。