Hennessyのブランド価値、29%減の38億米ドルに Brand Finance調べ
主要コニャックブランドで最大の下落となった背景には、米国と中国での高級酒需要の鈍化、貿易の混乱、在庫調整がある。
2026年10月9日(金)

ロンドンを拠点とするブランド価値評価コンサルティング会社Brand Financeが発表した最新レポートによると、Hennessyのブランド価値は2026年にUS $3.8 billionとなり、前年から29%減少した。同社の丸めた数値に基づくと、2025年の推定ブランド価値は約US $5.35 billionだったことになり、約US $1.55 billion減少した計算となる。
この下落は、Brand Financeが世界の酒類市場について、方向性が大きく分かれた1年だったと指摘する中で際立った。同社によると、テキーラブランドは業界で最も急速な成長を遂げた一方、コニャックやスコッチウイスキーのブランドは、主要輸出市場での関税、需要の軟化、高級品への支出減少に圧迫された。
コニャックの状況は一様ではなかった。Brand Financeによると、Martellは7%増のUS $925 millionとなり、今年の同社ランキングで価値を伸ばした唯一のコニャックブランドだった。Rémy Martinは4%減のUS $806 million。Brand Financeの評価ではHennessyは両社を大きく上回る規模を維持したものの、レポートで取り上げられた主要コニャックブランドの中で、下落幅は群を抜いて大きかった。
Brand Financeは10月8日、レポート「Alcoholic Drinks 2026」で調査結果を公表した。同社によると、世界で最も価値の高い酒類ブランド上位50のブランド価値合計は2026年にUS $161 billionとなり、2025年から4%近く減少した。
同コンサルティング会社は、コニャックが最重要市場である米国と中国の両方で打撃を受けていると指摘した。貿易の混乱、在庫調整、高級酒需要の軟化が、ブランド実績を押し下げた主な要因だという。Brand Financeのアルコール飲料部門グローバル責任者、ヘンリー・ファー氏は、輸出市場の1~2カ国に大きく依存するブランドは、関税や高級品消費の鈍化が販売環境に影響する中で、とりわけ大きな打撃を受けていると述べた。
このレポートは、Hennessyの価値下落を売上高や利益、あるいは想定売却価格の指標として示したものではない。Brand Financeは「ロイヤルティ免除法」と呼ぶ手法を用いて、ブランドを無形資産として評価している。ブランドに関連する将来の収益と、そのブランドが公開市場でライセンス供与される場合に企業が理論上支払うロイヤルティを推定する方法だ。同社はまた、情報が限られる場合には公開情報と仮定に基づいて算定していると説明した。今回の発表では、前年比の変化に対する為替変動の影響は内訳として示されていない。
レポート全体では、コニャックの不振が世界の酒類市場におけるより大きな変化の一端であることが示された。中国の白酒ブランドは、ブランド価値の総額で依然として上位を占めている。Moutaiは世界で最も価値の高い酒類ブランドの座を維持し、ブランド価値は2%増のUS $59.6 billionとなった。WuliangyeはUS $27.3 billionで2位を維持。Xinghuacun Fen Wineは6%増のUS $6.2 billionとなり、16%減のUS $5.3 billionだったLuzhou Laojiaoを上回った。
一方、ランキングで最も明確な成長を示したのはテキーラだった。José Cuervoはレポートで最も成長率の高い酒類ブランドとなり、ブランド価値は61%増のUS $1.6 billionに達した。Don Julioは57%増のUS $2.5 billion、Patrónは36%増のUS $2.4 billionとなった。Brand Financeは、こうした伸びはテキーラがパーティーでの飲用にとどまらず、高級酒としての飲用や贈答、ライフスタイル消費へと広がっていることを反映していると述べた。
こうした成長は、米国の酒類市場が一段と厳しさを増す中で実現した。Brand Financeは、Distilled Spirits Councilのデータを引用し、米国の蒸留酒サプライヤーの売上高が2025年に2%超減少し、US $36.4 billionとなったと指摘した。一方、酒類ベースのRTDカクテルは拡大を続け、売上高は16%超伸びた。
レポートではスコッチウイスキーブランドも後退した。Chivas Regalは32%減のUS $900 million、Johnnie Walkerは10%減のUS $2.8 billionとなった。例外はGlenfiddichで、13%増のUS $493 millionだった。Brand Financeは、米国市場での関税、消費者需要の軟化、営業コストの上昇がスコッチへの圧力につながったと分析した。
テキーラ以外で明るい材料となったのはCrown Royalだ。Brand Financeは同ブランドを2026年の世界で最も強い酒類ブランドに選び、ブランド・ストレングス・インデックス(BSI)で100点満点中96点、AAA+の評価を付与した。ブランド価値は12%増のUS $2.7 billion。同社は、消費者からの高い信頼、価格の受容度、RTD製品の成長がカナディアンウイスキーブランドの追い風になったと述べた。
コニャック生産者にとって、今回の数値はカテゴリー内の差が広がっていることを示している。Hennessyはブランド価値の絶対額で大差をつけて首位を保っているが、推定下落幅は大きかった。Martellは厳しい市場環境の中で小幅な成長を記録し、Rémy Martinの下落はそれより小さかった。Brand Financeの調査結果は、同じカテゴリー内でも各社が同じように市況悪化を受けているわけではないことを示唆している。
レポートはコニャックブランドごとの市場別内訳を示しておらず、Hennessyの下落のうち、需要や価格決定力、地域的な事業展開の変化がそれぞれどれだけ影響したかも明らかにしていない。ただし、Brand Financeの説明は、カテゴリーにとって最も重要な2市場である米国と中国の圧力を中心としている。両国では貿易摩擦や消費者の慎重姿勢、高価格の輸入酒に対する需要の鈍化が見られ、プレミアムな位置づけに大きく依存する同カテゴリーに打撃を与えている。
これらの数値は事業実績ではなくブランド価値の推定額であるため、特定の年に企業がどれだけ販売し、どれだけ利益を得たかを直接示すものではない。それでも、Hennessyの下落幅の大きさを、Martellの改善やRémy Martinの小幅な後退と比べることで、現在の市況悪化が主要コニャック各社に及ぼす影響の差がどれほど広がっているかを新たに測る手がかりとなる。