AIで選別したワイン樽48本、ワイナリーで熟成試験へ
バリャドリード大学の研究者らは、酸素透過性に基づく木材の分類で、ワイナリーの樽熟成をより予測しやすくすることを目指す
2026年10月31日(土)

バリャドリード大学の研究グループは、ワイン樽に使うオーク材を酸素の通しやすさで選別するため、人工知能を活用している。樽熟成の予測可能性と一貫性を高めることが狙いだ。
この取り組みは、同大学のETSIIAAに所属する研究グループUVaMOX、Cesefor Foundation、Ramón Bilbaoのワイナリーのほか、林業やワイン醸造に関わる組織が参加する共同プロジェクト「Tecnobarricas」の一環だ。Plataforma AKISが10月30日(金)に公開した情報による。
プロジェクトが焦点を当てるのは、樽熟成における重要な要素の一つである、木材を通過する酸素の移動だ。酸素透過率(OTR)として知られるこの指標は、熟成中のワインの変化に影響し、最終的な品質を左右する可能性がある。オーク樽は多くのワインの生産に欠かせないが、木材は構造が均一でない天然素材のため、樽ごとに特性が異なることがある。
Tecnobarricasは、樽を組み立てる前にオーク材の側板を分類し、このばらつきに対処することを目指す。Cesefor Foundationは、マシンビジョンと人工知能を用いて木材を分析するシステムを開発した。カメラを取り付けたアーチ状の装置で各側板の木口を撮影し、アルゴリズムが木材の解剖学的構造を調べ、酸素に対する挙動を予測する。
プロジェクトの説明によると、各側板は数秒で、高・中・低の3段階の透過性カテゴリーに分類される。これにより、生産者は樽の一部となる前の木材を客観的かつ定量的に評価できる。従来のように、目視検査や樽職人の経験に大きく頼る必要がなくなる。
UVaMOXは、AIによる分類が実際のセラー環境での挙動と一致するかを検証する。同グループは、ワイン醸造における酸素管理と制御を専門とする。研究者らは、同じカテゴリーに分類された樽が熟成中に実際に似た挙動を示し、再現性のある結果をもたらすかを確認する。
この科学的な検証は、プロジェクトの中核をなす。分類システムの信頼性が確認されれば、特定の樽が時間の経過とともにワインにどのような影響を与えるかを、ワイナリーがより明確に把握できる可能性がある。また、ロット間で一貫した熟成プロファイルを保とうとする生産者にとって長年の課題である、樽ごとの差を抑えることにもつながり得る。
プロジェクトはすでに研究段階を終え、商業生産を想定した試験に進んでいる。OTRに基づいて選別した木材から、樽48本の第1陣が製造され、ワイナリーに配布された。これらの樽を使い、Verdejo、Tempranillo、Garnachaの熟成性能を評価している。
試験では、酸素供給のプロファイルを制御することが、ワインの官能的な変化にどう影響するかを、より正確に明らかにする。研究者らは、同様に分類された木材で造った樽で熟成したワインが、従来型の樽で熟成したワインよりも均一に変化するかを調べる。
飲料業界にとって、この取り組みの意義は樽製造の技術的進歩にとどまらない。望ましい酸素プロファイルに合わせて樽をより確実に選べるようになれば、ワイナリーは熟成管理を改善し、セラー運営の不確実性を減らし、樽の購入をより戦略的に行える可能性がある。また、樽職人にとっては、従来の選別方法だけでなく、性能の測定値を用いて製品の差別化を図る新たな手段となり得る。
このプロジェクトは、職人技と伝統が重視されることの多い分野に、データを活用する手法が広がっていることも示している。ここで人工知能は、セラーや工房での人の判断に取って代わるものではない。むしろ、観察や経験、試行錯誤に長く頼ってきた工程に、測定可能な情報を加えるために使われている。
Plataforma AKISによると、この研究はワイン以外にも応用できる可能性がある。木材を通過する酸素の移動は、ほかの樽熟成飲料にも関係するため、同じ手法を将来的にウイスキーやブランデーなどに応用できる可能性がある。ただし、そうした展開はワインでのシステムの性能と、熟成条件や品質目標が異なる他の飲料でのさらなる検証にかかっている。
このプロジェクトには林業の側面もある。オーク材の物理的構造と、醸造学上の測定可能な成果を結び付けることで、参画機関は森林資源の価値を高め、木材の選定、樽の製造、飲料の品質の連携を強化しようとしている。
UVaMOXはこの取り組みを、研究室から生産現場への展開を目指す応用研究の一例として位置付けている。研究者らは、ワイン醸造における酸素制御の研究を生かし、デジタル分類システムが、最終的なワインのスタイルを形作るオークの役割を変えることなく、樽熟成工程の標準化を支援できるかを検証している。
樽48本の試験結果を踏まえ、この技術をワイナリーや樽職人がより広く導入できるかどうかが判断される見通しだ。AIシステムが示すカテゴリーが実際の樽の性能と高い精度で一致すれば、熟成工程で最も予測しにくい要素の一つを管理する実用的な手段となる可能性がある。