豪州の酒類生産者、生産を大幅縮小 アルコール消費量は過去最大の年間減少

需要低迷や家計の逼迫、ノンアルコールビールの急成長を背景に、2023年6月以降、豪州では80を超える醸造所が閉鎖した。

2026年10月26日(月)

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豪州の酒類生産者、生産を大幅縮小 アルコール消費量は過去最大の年間減少

アルコール消費量の急減を受け、オーストラリアの醸造所やワイナリーは、生産縮小や人員削減を迫られている。一部では全面閉鎖に至っており、業界は需要の低迷、家計の逼迫、ノンアルコール飲料市場の急成長に直面している。

厳しい状況は、小規模な家族経営企業から実績ある大手ブランドまで広がっている。ハンター・バレーのワイナリー経営者ネイサン・ヒューストン氏は、自社の売り上げが基本的な経費を賄うのに必要な水準を大きく下回っていると語った。同氏はABC Newsに、かつては忙しい日に最大220人がワイナリーを訪れていたが、今年は来客がまったくない日もあったと話した。

同氏によると、週間売上高は約2万ドルから約2,000ドルに減少した。今年はおよそ12週間にわたり、請求額を支払うのに必要な水準の約10分の1の売り上げで営業していたという。景気後退を受け、事業全体の見直しを余儀なくされた。今年の生産量は約20トンと、以前の60~70トンから減少し、樽などの購入も縮小した。

同様の圧力は市場全体にも及んでいる。ABCによると、タスマニアの醸造会社Boagは先週閉鎖した。また、6月に公表された貿易統計では、オーストラリアのワイン輸出額が22年ぶりの低水準に落ち込んだ。こうした減少の一因として、生活費の上昇によって、アルコールに使える可処分所得が減った消費者が多いことが挙げられている。

業界データは、飲酒習慣により深い変化が起きていることを示している。ABCが引用したFitch Solutionsのデータによると、世界のワイン消費量は約10年にわたって減少している。オーストラリアでは、2024年までの3年間でアルコール消費量全体が約10%減少した。IBISWorldのシニアアナリスト、マイケル・ドイル氏はABCに、2024年度の減少幅は過去最大だったと語った。

アナリストや業界団体は、複数の要因が同時に減少を招いていると指摘する。若い世代のオーストラリア人は前の世代より飲酒量が少なく、インフレと生活費の上昇が消費支出を抑えている。さらに、ノンアルコールの選択肢が飲料市場で占める割合を拡大している。

こうした消費者行動の変化は、業界の経営を塗り替えつつある。Independent Brewers Associationによると、2023年6月以降、80を超える醸造所が閉鎖した。ホバートでは今年初め、ホテル併設のバー7店舗が任意管理手続きに入った。大手小売業者でも、成長の鈍化や売り上げの減少が見られる。Colesは前会計年度の酒類販売が3.3%減少したと発表。BWSとDan Murphy’sを傘下に持つEndeavour Groupは、小売売上高の伸びがわずか0.7%だったと報告した。

業界の代表団体Australian Grape and Wineは、現在の状況について、同業界が数世代にわたり経験してきた中で最も厳しい局面だと述べた。最高経営責任者のリー・マクリーン氏は、複数の地域のブドウ栽培農家やワイン生産者が深刻な圧力にさらされているとし、事業の方向転換ができなければ存続できない企業もあると警告した。

同氏によると、同団体は、事業再編や他作物への転換、ブドウ畑の別用途への活用など、事業者が移行に対応できるよう政府に支援を求めてきた。この働きかけは、飲料業界が抱えるより広範な課題を反映している。主要な輸出国で需要が縮小すれば、その影響は個々のワイナリーや醸造所を超えて波及し、供給のあり方や雇用、投資を変化させるとともに、製品と販売市場の両面で多角化を迫ることになる。

従来型のビールやワインの生産者が苦戦する一方、ノンアルコール飲料メーカーは事業を拡大している。ABCによると、オーストラリアのノンアルコールビール販売量は、1億5,000万リットルから2028年までに約3億リットルへと、ほぼ倍増する見通しだ。報道で引用されたANZのデータでは、ノンアルコールビールはアルコール業界内で最も成長の速い飲料分野となり、2023年にはオーストラリアのノンアルコール飲料販売の45%、ビール販売全体の約10%を占めた。

ノンアルコールビール会社Heaps Normalの共同創業者兼最高経営責任者、アンディ・ミラー氏はABCに、同社の売り上げは年約20%のペースで伸びていると語った。同社は現在、ノンアルコールビールの樽生販売も展開しており、飲酒習慣の変化が小売店だけでなく、バーやレストランにも及んでいることを示している。同氏によると、一部の店では同社の樽生商品がアルコール入り商品を上回る売れ行きを見せている。

こうした変化は、従来型の生産者が受ける圧力が一時的なものではない可能性を示している。消費者が飲酒を続けている場合でも、飲む頻度を減らしたり、より安価な商品を選んだり、アルコール飲料と低アルコール・ノンアルコール商品を交互に飲んだりする人が増えている。生産量やワイナリーでの試飲・販売施設への来訪、あるいはプレミアムな位置づけを軸に事業を築いてきたワイナリーや醸造所にとって、こうした動きは資金繰りを急速に悪化させかねない。

ワイン業界は打開策を求め、海外市場にも目を向けている。マクリーン氏によると、生産者は米国や英国といった既存の輸出先で市場シェアの回復を目指す一方、インドや東南アジアでの機会も追求している。国内販売が軟化し、一部地域の生産者が従来の事業モデルでは存続できない可能性に直面するなか、輸出先の多角化は一段と急務となっている。

別の業界団体Alcohol Beverages Australiaは、企業がすでに商品群を広げ、低アルコール・ノンアルコール商品に投資することで、新たな嗜好に対応していると述べた。飲料業界の一部にとって、これは前進への道筋となる可能性がある。しかし、規模が小さい企業や多額の負債を抱える企業、顧客層が限られている企業にとっては、適応がより難しくなるかもしれない。

IBISWorldのドイル氏は、インフレが高止まりし、消費者が慎重な姿勢を続ける限り、圧力は続くと予想している。かつてのようにアルコールに使えるお金はないとしたうえで、1人当たり消費量は今後も緩やかに減少し続けるとの見通しを示した。

オーストラリア政府は、業界が直面する課題を認識していると述べた。ABCに寄せた声明で、農業・漁業・林業相のジュリー・コリンズ氏は、ブドウ・ワイン業界に対し、政府が1億500万豪ドルを超える支援を行ってきたと説明した。これにはWine Equalisation Taxの還付や、ワイン用ブドウの購入を規定する新たな義務的行動規範が含まれる。コリンズ氏は、今後の機会について業界と引き続き協力していくと述べた。

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