英国政府、2027年2月1日から酒類税を4.55%引き上げへ
酒類税の引き上げで醸造所やパブの負担が増える一方、小規模生産者向け優遇を拡充。一部の仕入れ先拘束型パブにゲストビール販売権を認める案も盛り込まれた。
2026年11月6日(金)
英国政府は11月5日木曜日、2027年2月1日から酒類税を4.55%引き上げると発表した。醸造所やパブの税負担が増える一方、小規模生産者への支援を拡充し、一部の仕入れ先拘束型パブがゲストビールを販売できるようにする新たな権利も提案した。
The Beer Postが報じたところによると、Budget 2026に盛り込まれた措置は、ビール市場に明暗をもたらす見通しだ。大手醸造所や多くの外食・宿泊事業者はコスト増に直面する一方、小規模生産者には税優遇の拡充が予定されている。飲料業界では、醸造所、輸入業者、パブの利益率や価格、競争環境に影響する可能性がある。最終的な影響は、事業者がコスト増をどの程度転嫁するか、また提案されたパブ規則がどのような形で法制化されるかによって変わる。
新税率では、アルコール度数3.5~8.4%の標準的なビールにかかる税額が、22.58ポンドから23.61ポンドに引き上げられる。同じ度数帯の条件を満たす樽生ビールは、19.45ポンドから20.34ポンドとなる。アルコール度数4.5%の樽生ビール1パイントでは、付加価値税(VAT)を除き、酒類税の引き上げ分は約2.3ペンスとなる。
業界団体やパブ運営事業者は、消費者への影響が酒類税の引き上げ分を上回る可能性があると警告している。Admiral Tavernsは1パイント当たり約20ペンスの値上げを見込むとし、Young’sは店舗ごとに価格を調整する方針を示した。The Beer Postによると、予想される20ペンスの値上げには、酒類税の変更だけでなく、より広範な運営コストの上昇が反映されている。
一方、政府は2027年2月1日からSmall Producer Relief(小規模生産者向け税優遇)を拡充する。改定後の制度により、英国全土の2,000を超える小規模酒類生産者に対し、年間約1,000万ポンドの支援を行う見込みだ。
今回の変更は、コスト上昇に直面する対象生産者への支援を拡充し、低アルコール度数商品の生産を促すことを目的としている。アルコール度数3.5%未満のビールやその他の対象酒類には、より手厚い割引逓減措置が適用される。度数3.5~8.4%の商品については、HM Revenue & Customs(英国歳入関税庁)が限界割引率を小売物価指数に加えてさらに10%引き上げる。
優遇措置を受けるには、生産者はHMRCの小規模生産者要件を満たさなければならない。対象となるのは、アルコール度数8.5%未満の適格な酒類を生産し、ライセンスに基づく製造を行わず、年間生産量が純アルコール換算4,500ヘクトリットルの上限を下回る事業者だ。
Society of Independent Brewers and Associates(SIBA)は、低アルコール度数ビールの需要が伸びるなか、従来の制度は小規模醸造所に不利だったと指摘してきた。改定される逓減措置は、こうした商品の商業的な採算性を高めることを狙う。ただし、各生産者が実際に受ける恩恵は、生産量やアルコール度数、適格要件を満たすかどうかによって異なる。The Beer Postが挙げた例では、アルコール度数4.5%の標準的なビールを1,000ヘクトリットル生産する醸造所は、新たな標準税率の下で、優遇措置適用前に年間約4,600ポンドの追加税負担が生じる可能性がある。
予算案には、イングランドとウェールズのPubs Codeに「ゲストビール」条項を盛り込む提案も含まれる。法制化されれば、対象となる仕入れ先拘束型パブのテナントは、パブ所有会社が定めた供給契約の外からビールを仕入れる自由が広がる。この措置はまだ法律になっておらず、具体的な権利や条件は今後の法制化の内容によって決まる。
この提案は、取扱店を増やそうとする小規模醸造所にとって重要となる可能性がある。SIBAによると、仕入れ先拘束契約によってテナントが仕入れ・販売できる商品が制限されるため、独立系醸造所は現在、地域のパブの約62%に商品を提供できない。新たなゲストビール販売権により、一部の生産者にとって販売経路が広がり、飲み手の選択肢も増える可能性がある。ただし、その恩恵の規模は、最終規則の適用範囲とテナントにとっての利用しやすさによって左右される。
スコットランドではすでにゲストビール販売権が導入されているが、SIBAは2026年4月の報告書で、制度の認知度が低く、申請にも障壁があると指摘した。この経験から、イングランドとウェールズで同様の制度を導入しても、最終的な枠組みが明確で実用的でなければ、販路拡大につながらない可能性がある。
別途、政府はイングランドの対象パブ、ソーシャルクラブ、大半のライブ音楽会場に対する事業用不動産税の軽減率を、2027年4月1日から15%から35%に引き上げると発表した。この優遇措置は、酒類税の引き上げやその他のコスト上昇に直面する外食・店内飲食分野の一部を支援する。
一連の措置が市場にもたらす影響は一様ではない。条件を満たす小規模醸造所は、税額控除の拡大による恩恵が大きくなる。低アルコール度数ビールを主力とする生産者には、より有利な優遇措置が適用される。一方、追加のSmall Producer Reliefを受けられない大手醸造所は、酒類税の増額分を負担することになる。ゲストビール措置が法制化されれば、仕入れ先拘束型パブのテナントは仕入れの自由度が高まる可能性があり、イングランドの一部のパブは事業用不動産税の軽減拡大の恩恵も受ける。
飲料業界全体では、今回の変更によって価格設定や商品戦略が変わる可能性がある。醸造所は優遇措置の拡充を踏まえ、低アルコール度数ビールの採算性を見直す可能性がある。また、パブ運営事業者や輸入業者は、税負担の増加分をどこまで吸収し、どの程度を顧客に転嫁するか判断を迫られる。優遇措置が意図どおり機能し、仕入れ先拘束型パブへの販路が広がれば、小規模生産者は市場の一部で競争力を高める可能性がある。
ゲストビールに関する法案、改定後のSmall Producer Reliefの税率表、事業用不動産税の支援策については、今後さらに詳細が示される見通しだ。醸造所や外食・宿泊事業者には、2027年2月1日の酒類税変更に備え、新たな規則が生産、卸売価格、小売価格に及ぼす影響を試算するための数カ月が残されている。